「願わくは花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」
釈迦が入滅したとされる陰暦2月の満月のころ、桜の花が咲いている下で生涯を終えたいと自ら詠んだとおり、西行は1190年2月16日に世を去りました。まさに本懐を遂げた歌人の姿に、慈円など当時の知識人たちは深い感銘を受けたようです。
戦乱の世に生を受けながら、官位や定住を捨て仏道に入り、自然と旅と歌を愛した生涯が、西行の遺した数多くの歌とともに紹介されます。新古今和歌集に最も多くの歌が選入されていること、その選者である藤原定家や時の権力者源頼朝、同年生まれの平清盛との関係など、興味深く読むことができました。